2018-04-25

タイの不動産価格推移は?バンコク、シラチャの価格動向も徹底調査!

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世界経済成長の約6割を占めるアジア。世界2位の経済大国である中国に牽引されるかのように東南アジアの成長は目覚ましく、経済力をGDP(国内総生産)で計るとインドネシアをトップにタイは第2位。

タイはASEAN(東南アジア諸国連合)の中では中心に位置しているといった連結性は今後の経済成長を観察していく上での重要なポイントとなります。

今後のタイの経済発展の柱となるラオス・ミャンマーを経由する中国までの南北経済回廊、ミャンマーのヤンゴンからタイ、ラオスを経由してベトナムの南シナ海沿いの都市ダナンとを結ぶ東西経済回廊、さらに2017年に発表されたチャチュンサオ、チョンブリー、ラヨーンの東部3県を東部経済回廊(EEC:Eastern Economic Corridor)のインフラ開発による不動産価格変動が注目されてきます。

一方、 キャピタルゲインや賃貸収益目的への投資以外にも、タイは生活価値向上を目的とした不動産購入も欧米人を先導に、日本人からも注目されています。

先進国に比べた物価安に加えトロピカルな気候と社会的圧力の低さ、そして先進国水準の先端医療施設の普及なども影響し、セカンドライフのための移民先国としても根強い人気を保っています。

今回は、そんなタイの不動産投資先としての魅力について、不動産価格の観点から解説していきます。

タイ全体の不動産価格は右肩上がり!?

まずは、タイ全体の不動産価格推移を見ていきましょう。

次の表は、2009年における「戸建て」「コンドミニアム」「土地」の平均価格を100とした際の、不動産価格の推移を表しています。

図:タイの住宅価格指数の推移(2008年2月~2018年2月)
出典:タイ銀行

タイの不動産価格は、2018年には2009年の水準と比較して、戸建て物件で40%、コンドミニアムは75%、土地は74%の上昇となっています。

戸建て物件の価格は2014年頃から横ばいであるものの、コンドミニアムや土地については、順調な成長を表していると言えます。

次の章からは、日本人居住人数が1位の首都「バンコク」とその近隣地域チョンブリ県の「シラチャ」のコンドミニアム価格を比較しました。

タイ不動産価格の動向:バンコク編


およそタイの人口は6800万人でその中の約870万人が住む首都バンコクに住んでいます。日本貿易振興機構(JETRO)の2017年の報告によると、欧米企業はもとよりタイには約5,444社の日系企業が進出しており バンコクに拠点を構える企業は全体の半数以上。

また、外務省平成28年度海外在留邦人数調査統計によるとタイ全土での日本人在留数は74,000人で、そのうちの約50,000強がバンコクに居住しています。

2018年の不動産市場 は路線が複数乗り入れている駅周辺の価格が上昇傾向にありと報告され、住宅、宿泊施設、そして商業施設の不動産価格上昇が予想されています。

一方、価格に割高感があっても購入者意欲は収まりません。2017年8月〜2018年1月の間の消費者信頼感指数の伸び示唆するようにタイ国民の高級不動産買い意欲はさらに増加しています。

不動産デベロッパーCBREのレポートによると、チーロムやスクンビット、セントラルルンピニなど中心街に位置する高級コンドミニアムの不動産購入者は 約75%がタイ国民で残りが外国人バイヤーとなっています。

物件レベル
価格
スーパーラグジュアリー
THB 300,000以上/m2
中流上
THB 90,000-119,999/m2
ラグジュアリー
THB 200,000-299,999/m2
中流
THB 70,000-89,999/m2
ハイエンド
THB 120,000-199,999/m2
それ以下
THB 70,000/m2


購入への需要があっても供給量が見合わないバンコク市内の不動産物件。そこでデベロッパーはこの状況に素早く反応し、2017年には64,000件の様々な価格帯の新築コンドミニアムを売りに出し、その数は2016年度の供給数の55,000件、2015年の58,000軒よりも 上回りました。

一方利便性があまり良くないバンコク中心部以外の住宅用不動産は供給過剰からから不動産価格の伸びは見ることができません。また、住宅ローン融資の締め付けからさらに販売が低迷しています。

一方、中心部のコンドミニアムは土地価格の上昇の影響を受けて、賃料水準は、アソーク、エマカイ地区の 1 ベッドタイプで月額 THB25,000 ~50,000、2 ベッドタイプで月額 THB40,000~80,000、オンヌット地区の1 ベッドタイプで月額 THB15,000~30,000、2 ベッドタイプと月額 THB20,000 ~50,000 がここ数年の価格推移の一例です。

図:ハイエンドコンドミニアムの提示価格推移

出典:CBRE「Bangkok Overall Market View Q4 2017」

インフラ計画と価格の関係

市内中心部には高架鉄道のBTS(スカイトレイン)、地下鉄のMRT(メトロ)、空港線のARL(エアポート・レイル・リンク)の電車が走っており路線エリア内かつ駅に徒歩圏内のロケーションにある物件はタイの他エリアと比較しても高価となります。

2017年12月現在のバンコクでは計5路線が敷かれており77駅、線路の合計距離は109.6kmです。

  • BTSスクンビット線(濃緑色)
  • BTSシーロム線(薄緑)
  • 地下鉄MRTブルーライン(青)
  • 高架鉄道MRTパープルライン(紫)
  • 高架鉄道エアポートリンク(エンジ)

タイは交通渋滞が激しいことでも知られ、特に市内から近郊へつながる高速道路に入る前の交通量は並大抵ではありません。車での移動は通勤ラッシュの時間帯では通常の2倍以上もかかることが一般的認識となっており、このような通勤や移動のストレスを考慮すると電車路線近辺の物件は人気の高いものとなってきています。

中長期での成長

先述の通り、特に多数路線が乗り入れている駅周辺の不動産価格は今後も高騰していきますが、政府のインフラ強化計画によって今後延長されていくことで中長期での不動産価格にも成長が期待されます。今後の開通計画は下記の通りで市内中心地から郊外へと急ピッチで路線延長が行われ、さらに不動産市場が活性化される見込みです。

  • BTSスクンビット線 (ダークグリーンライン 北側/南側) 2018~20年開業予定 (Khu Khot ~ Bang Pu)
  • ゴールドライン 2019年開業予定 (Klong Thonburi ~ Wat Anongkaram) ※モノレール
  • BTSシーロム線 (ライトグリーンライン 西側) 2020年開業予定 (Bang Wa ~ Borommaratchachonnani)
  • ARLライトレッドライン (エアポートリンク) 2020年開業予定 (Bang Su ~ Makkasan)
  • MRTブルーライン (計3路線) 2020~21年開業予定 Hua Lamporng ~ Bang Kae)
  • ダークレッドライン 2020~21年開業予定 (Ransit ~ Thammasart University)
  • イエローライン 2021年開業予定 (Ladphrao ~ Samrong) ※モノレール
  • ピンクライン 2021年開業予定 (Khae Rai ~ Min Buri) ※モノレール
  • パープルライン(南部延伸) 2022年開業予定 (Tao Poon~Rat Burana)
  • グレーライン 2022年開業予定 (Watcharaporn ~ Thonglor) ※モノレール
  • スワンナプーム空港ライトレール(LRT) 2022年開業予定 (Bang Na ~ Suvarnabhumi Airport)
  • オレンジライン 2023年開業予定 (Taling Chan ~ Min Buri)
  • ライトブルーライン 2029年開業予定 (Pracha Songkhro~Chong Nonsi) ※モノレール

タイ不動産価格の動向:シラチャ編


チョンブリ県全体の人口は約130万人で、そのうち約27万人がシラチャ郡に集まり、 約10,000人の日本人居住数が記録されています。その理由には、シラチャ市に拠点を持つ日系企業が背景にあります。

シラチャ郡シラチャ市、はバンコク中心から東に約100キロに位置するチョンブリ県で車やバスでの移動となります。所要時間はおよそ2時間、またスワンナプー ム国際空港からは 約1時間30分、リゾート地であるパタヤからは約30分なので、高速道路を利用してバンコク市内もしくは郊外までの通勤組も存在します。

タイランド湾東部に位置していることで漁村として地域社会が発展しましたが、1990年代前半からタイ政府の経済政策の第2段階成長計画によって工業地帯に開発されシラチャから車で約30分の距離には日本も含め大手グローバル企業がビジネス拠点を構えるアマタシティー工業団地、イースタンシーボード工業団地、アマタナコン工業団地などが集中しています。

シラチャには大きな日本人村も存在し、2009年にはタイ第2の日本人学校が開校しました。この開校により単身赴任型が家族型に変化してきたことによって居住需要が増加し複数の外資ベンチャーやローカルのデベロッパーによってコンドミニアムの供給が押し上げられました。2015年にはイオンショッピングセンターもオープンしました。

シラチャ市の特徴は現在運営されている3つブランドの商業ビルによって区画化されてエリアが開発されています。

シラチャは3店舗のショッピングモールを中心に区分化されています。

  • シラチャナコン地区(パシフィックパークを中心)
  • スクンビット通り東側地区(イオンシラチャを中心)
  • スラサック区(J-PARKを中心)

コンドミニアムの開発計画を参照すると、スクンビット通り東側地区には日本人をターゲットとした不動産開発がされており、一方スラサック区では日本企業との合弁による新興住宅地の開発が行われています。

経済成長によって中産階級が増大し不動産市場の流動性を促進しているためキャピタルゲインが発生し、都市部に比べて安価な近隣県投資人気が過熱化しています。

2016年に完成した高級コンドミニアムMarina Bayfront Srirachaの完成時売り出し価格はワンベッドルームタイプ広さ35 m2 でBHT2,700,000、2018年現在の販売価格はほぼ同サイズでBHT 4,600,000と価格が高騰しています。

今季オープン予定の高級コンドミニアムからみた今後の成長期待

シラチャのコンドミニアムは、バンコクのコンドミニアムと比較するとかなり外的要素および内的要素双方に大きな格差が見られましたが、去年オープンした全273戸、10階建て高級コンドミニアム「マリーナベイフロントシラチャ」や 今年オープン予定の29階建て、全285戸の高級コンドミニアム「ヌサ シラチャ」から派生する周辺エリアの都市開発も注目されます。

中長期での成長

先述の2軒の高級コンドミニアムには米国のマリオット系ブランドホテルや仏系のアコードが国際ホテルを運営する予定です。ここで着眼すべきなのが、大型ホテルに続く後発の投資家軍の今後の動向です。

同ランキングのホテルよりもむしろ1ランクグレードを下げた宿泊施設およびが開業するとみられます。すでにコンドミニアムは 今後の土地の価格上昇を狙い建設が続けられます。供給過多状態に一時的に陥る可能性も否定できません。しかし、長期的投資を考えるとシラチャは地理的には見過ごすことのできないエリアと言えます。

まとめ

経済成長国内外のコンドミニアムに対する購入意欲は年々上昇傾向にあります。都市部の価格高騰化しており、今後数年はまだ上昇傾向が見られます。

また、近県では中流階級層の増加により、郊外よりも市街地への移り住みが進み、またインフラ整備や都市計画の加速化が起因して不動産価格が大幅な伸びを見せていきます。

しかし、直近の価格推移のみをベンチマークに不動産購入を行うことはリスクをともないます。中長期的な経済成長や政治的背景などもあ見極めてから最終決断を下すことが大切です。