2021-08-18

海外不動産投資の税金完全ガイド:物件売却時の注意点も解説

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海外不動産の投資を検討する際、その物件価格はもちろんですが、その後課せられる税金についても事前に理解しておきたいもの。

日本の不動産ならまだしも、海外の税制度は複雑そうで、為替レートによっても大きく変わってくるのではないか、と不安に思う方も多いのではないでしょうか?

さらに、海外不動産の購入が投資目的の場合、税金は投資コストとして計算に入れておかなければ投資の意味を果たさなくなるため重要です。

そこで、今回は海外不動産の購入時から運用時、売却時に関わる税金についてフォーカスし、投資に対する心配事を解決していきたいと思います。

1 海外不動産の購入や売却によって税金はかかる?

日本国内の不動産投資と同様に、海外不動産投資でも物件の購入や売却によって税金の支払いが必要です。海外不動産投資で発生する各税金について解説します。

1-1 海外不動産を購入した時にかかる税金

例えば日本国内の不動産を購入すると、不動産取得税が課税されます。海外不動産の購入に対しては、日本国内で不動産取得税が課税されることはありません。

その一方で、日本国内と海外とで複数の税金がかかります。支払が必要な税金とは、例えば以下のようなものです。

  • 不動産会社に支払うコンサルティングフィーの消費税
  • ローンを利用する場合に契約書へ貼付する印紙税
  • 固定資産税が課税される国で物件を購入した場合の固定資産税

固定資産税が課税される国の不動産を購入した場合は、海外現地でかかる固定資産税について、売主と精算が必要です。

海外現地で課税される税金については国やエリアによって異なるため、どんな税金がかかるのか事前の確認を要します。

1-2 海外不動産の運用時にかかる税金

物件の運用益に対しては、海外不動産投資でも日本国内の不動産投資と同じように税金がかかります。海外不動産投資による所得も日本国内で事業所得とみなされるためです。

このため、海外不動産投資の運用益に対しては、日本国内の所得税と住民税とが課税されることを覚えておく必要があります。

そのほか、海外不動産投資ではほぼどの国でも固定資産税が課税される点に要注意です。

例えばハワイの場合は、不動産取得時に税金はかかりませんが、毎年10月1日時点で、その所有形態や固定資産税評価額に応じて0.35~1.24%の固定資産税が課税されます。

なお、税率は変更される可能性があるので、逐一確認が必要です。さらに、所有権移転時登記申請に係る登記費用や印紙税なども各国で支払いを求められます。

税金の取扱いは国ごとに異なりますので、事前にその不動産の取得にどのような税金がかかるのか事前調査が必要です。

参考例としてタイでは、地価に応じて政府から物件の評価額が算定され、登記費用として政府評価価格の2%がかかります。

また、印紙税は売買価格、または政府評価価格の高いほうの0.5%となっていますが、特定事業税が適用される場合は不要です。

なお、海外不動産の運用によって損失が発生した場合は、日本国内の不動産投資と同様に、給与所得などと損益通算することで所得税や住民税を削減可能です。

ちなみに、家賃収入を海外現地の口座に入れておき、日本国内に送金しなかったとしても確定申告時の所得計上は必要になります。

また、海外不動産投資では日本国内と海外現地の両方で納税が必要です。海外現地でも確定申告を要するため、現地の税務に精通した税理士の手を借りるのが安全と言えます。

外国税額控除の仕組み

日本と海外との二重で税金を支払うのであれば、海外不動産投資では利益など出せないのではないかと思う人もいるのではないでしょうか。

日本が租税条約を締結している国で海外不動産投資をする場合は、日本と海外とで二重に課税されることはありません。結果的にどちらか税額が大きい方の国でのみ税金を支払うことになります。

「結果的に」と解説しているのは、一旦どちらも満額で納税する必要があるためです。両国で確定申告することによって、後に過払い分が返金されることになります。

なお、税金が返金されるタイミングについては要注意です。2ヶ国で確定申告をした後に返金されることとなるため、返金のタイミングはかなり後になることもあります。

1-3 海外不動産の売却にかかる税金

海外不動産を売却すると、日本国内の不動産を売却した際と同様に譲渡所得税が課税されます。しかし、租税条約を締結している国の物件を売却した場合は、譲渡所得税も外国税額控除の対象です。

海外には不動産の売却によって譲渡所得税が発生する国としない国とがあるため、これに関しても管理会社などに事前の確認を要します。

なお、海外不動産の運用では減価償却費を計上できないため、例えば購入額と同等の金額で売却した場合は、海外不動産の売却による譲渡所得税は少額です。

譲渡所得に対する税金は他の所得と分けて分離課税により計算しますが、海外不動産の所有期間により「短期譲渡所得」(5年以下の所有)と「長期譲渡所得」(5年以上の所有)で、それぞれ税率が異なります。

「短期譲渡所得」は、課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)に加え、平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納付が必要です。

一方、「長期譲渡所得」は、課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)に、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて納付します。

所有期間に関しては、不動産を譲り渡した日の年の1月1日時点で判断されます。

2 海外不動産投資による節税は効果が縮小

日本国内で不動産を購入すると、購入した不動産に関する減価償却費を計上できます。「不動産投資では減価償却費の計上によって節税ができる」と宣伝している不動産会社は少なくありません。

しかし、海外不動産投資では減価償却費の計上ができないことに要注意です。

2-1 2022年に実施する確定申告から減価償却費は計上できない

従来、アメリカを中心とした海外不動産投資を活用し、多額の減価償却費を計上することで日本国内の所得税・住民税を節税する方法が主に富裕層の間で流行していました。

海外不動産投資による節税はかねてから会計検査院によって指摘されており、2019年末に発表された税制改正大綱では、今後減価償却費を活用した節税ができなくなる見通しとなっています。

管理委託費や修繕費などの経費は計上できますが、不動産投資の経費で金額が最も大きいものは減価償却費なので、今後海外不動産投資による節税効果はかなり小さくなることが予測されます。

今後の海外不動産投資では、賃貸運用によるインカムゲインや物件売却によるキャピタルゲインを狙っていくのが妥当です。海外不動産投資によるメリットはこちらの記事で解説していますので、併せてご覧ください。

海外不動産投資のメリット・デメリットは?日本との比較や特有のリスクも解説

3 海外不動産の取得に関する報告義務

海外の不動産を取得した場合は、毎年の確定申告時に、「国外財産調書」という海外資産に関する報告書を税務署に提出しなくてはならないケースもあります。

これは国外財産調書制度と呼ばれ、各年末時点で保有している海外不動産などについて税務署に対する報告義務制度です。保有する海外資産の総額が5,000万円超である日本居住者が対象者となっています。

4 個人間の格安海外不動産にも税金がかかる!?

海外不動産を無償で譲ってもらった場合や、市場価格と比較して格段に安い価格で売買を行った時は、その不動産が贈与とみなされ、「贈与税」を納めなければならないこともあるため注意が必要です。

5 海外不動産投資の税金に関する注意点

5-1 ローンの返済には要注意

ローンを利用して海外不動産投資を進めた場合、ローンの完済を待たずに物件を売却すると、残債の一括返済が必要です。

しかし、すでに解説したとおり、税金が還付されるタイミングは遅れることもあるため、物件の売却額だけではローンを完済しきれない場合もあります。

手残り額が残債に満たない場合は、別途自己資金の投下が必要です。ローンを利用して購入した物件を売却する場合は、事前に残債額と手残り額とを照合することが重要です。

5-2 日本の確定申告における為替について

すでに解説したとおり、海外不動産投資による収支は日本での確定申告が必要です。しかし、海外不動産投資の取引は投資先の国における通貨で進めるため、確定申告は日本円へ換算して行います。

為替には売値・仲値・買値の3種類あり、確定申告の際には基本的に仲値の相場を利用します。

その一方で、1年以上の長期間にわたって物件を運用する場合には、仲値以外の相場で換算することも可能です。

税金は為替相場によっても増減するため、最も税金が少なくて済むのはどの為替なのか、事前に検証するのも重要です。

6 まとめ

租税条約を締結している国で投資するのであれば、海外不動産投資をしても二重課税になることはありません。

しかし、税金の種類や税率は日本も海外も時期によって変化するため、リアルタイムで把握することが重要です。

なお、海外不動産投資では2022年の確定申告から減価償却費を計上できないため、節税効果は大幅に縮小する見通しです。今後は資産分散やキャピタルゲインなど別の目的に沿った投資をするのが妥当と言えます。

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