2022-06-21

海外不動産の税金をパターン別に紹介!節税対策や確定申告の方法は?

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海外不動産を購入するにあたって、「税金」が気になるという方も多いのではないでしょうか。日本と海外は税制が異なることもあり、不動産投資で生じる税金の種類や、課税率などを把握しておかなければなりません。

本記事では、海外不動産で課される税金の種類を5つのパターン別で紹介します。また、税金を処理する際の注意事項や、最新の節税対策についても解説しています。

海外不動産に税金は課される?

日本の不動産と同様に、海外の不動産を取得・保有・売却するなかで、税金が課されることとなります。しかし、各国で税制が異なるため、「どの段階で、どのような税金」が発生するのかを確認する必要があります。納税漏れが生じないように、1つ1つの税金を丁寧に調べるようにしましょう。

海外不動産で課される税金の種類

それでは、海外不動産で課される税金の種類をパターン別で紹介します。「不動産取得時」、「不動産保有時」、「不動産売却時」、「不動産を贈与したとき」、「不動産相続時」、の5つに分けて解説するので、どのパターンに当てはまるのかを確認しましょう。

パターン1:海外不動産取得時の税金

パターン1は、海外不動産を取得したときに発生する税金です。国ごとで多少異なりますが、「不動産取得税」、「印紙税」、「登録免許税」などの税金が課せられます。

たとえば、カンボジアの不動産を取得したときには、上記の印紙税に加えて、不動産取得税にあたる「資産譲渡税(物件評価額と売買価格を比較して高い方の4%)」を納めます。

パターン2:海外不動産保有時に課される税金

次に、海外不動産を保有しているときに課される税金です。家賃収入を得ている場合、「所得税」や「法人税」が課せられます。また、日本同様に、不動産に対する「固定資産税」が課せられる国もあります。

なお、海外不動産で発生した所得については、「総合課税」に分類されます。総合課税とは、ほかの所得と合算して所得税額を算出する方法です。日本国内で会社員として収入を得ている場合、海外不動産投資による所得との損益通算ができます。仮に、海外不動産投資で赤字が発生している場合、所得税の節税が可能です。

パターン3:海外不動産を売却した際に課される税金

海外不動産を売却すると、売却益に課税される「譲渡所得税」が発生します。譲渡所得税は、譲渡益から、海外不動産の取得費用や譲渡費用を差し引いた金額が課税対象です。

1点注意しておきたいのが、海外不動産の所有期間で税率が異なる点です。保有期間「5年」を境に、税率が変わるので気をつけましょう。

・短期譲渡所得(5年以下):譲渡所得×39.63%(所得税及び復興税30.63%、住民税9%)

・長期譲渡所得(5年と1日以上):譲渡所得×20.315%(所得税及び復興税15.315%、住民税5%)

※いずれも申告分離課税に分類されます

また、海外現地の税制に応じて、「キャピタルゲイン税」が課せられる場合があります。たとえば、マレーシアでは、不動産売却時に「不動産譲渡益税(RPGT)」と呼ばれるキャピタルゲイン税が適用されます。

マレーシアの不動産譲渡益税(RPGT)(※1)

保有期間
内国法人 マレーシア人および永住権者
外国人および外国法人
取得日より3年以内
30% 30% 30%
4年目 20% 20% 30%
5年目 15% 15% 30%
6年目以降 10% 0% 10%

パターン4:海外不動産を贈与する際に課される税金

4つ目のパターンは、海外不動産を贈与する際に課される税金です。日本に居住している方が、海外不動産を含み、海外の資産を知人・家族などに生前贈与する際には、贈与税を納めなければなりません。

なお、海外不動産における贈与税が発生しない例外があります。

・贈与者と、贈与される者(受贈者)の両者が贈与時からさかのぼって10年以内に日本国内で住所を持っていない

パターン5:海外不動産を家族に相続する際に課される税金

最後に、海外不動産を家族に相続する際に課される税金です。海外不動産を保有していた人が日本非居住者だった場合でも、遺産を相続する側の家族が日本に居住しているのであれば、日本国内で相続税の納税義務が生じます。

贈与税同様に、海外不動産における相続税にも例外があります。詳しくは税理士にもご相談ください。

・相続人、被相続人ともに相続開始時からさかのぼって10年以内に日本国内で住所を持っていない

海外不動産の税金に関する注意事項

確定申告を日本と海外の双方で行う

海外不動産で利益が発生している、していないに関わらず、日本と海外の双方で確定申告が必要です。仮に、利益が出ている場合に、確定申告を済ませていないと、追徴課税される恐れがあります。また、日本国内の不動産と同様に、損益通算による所得税の還付を受けられる可能性もあるので、確定申告を忘れずに行うようにしましょう。

外国税額控除制度を活用する(租税条約を締結している国のみ)

海外不動産を保有するなかで、海外現地でも税金が発生する場合もあります。日本と海外で二重課税を心配する方も多いですが、日本と「租税条約」を締結している国であれば、「外国税額控除制度」を活用できます。

外国税額控除制度とは、海外で支払った税金(所得税やキャピタルゲイン税)を日本国内の確定申告時に控除する制度です。ただし、日本との間で租税条約が締結されていることが前提であるため、非締結国のミャンマーやラオスなどの不動産投資で発生した税金は、外国税額控除制度が適用されません。

国外中古建物に関する損益通算が一部適用外

海外不動産で、「中古物件」を購入する方は注意が必要です。令和2年度の税制改正の結果、令和3年分(2021年分)の確定申告から「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例」が適用されるようになりました。

「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算の特例」とは、海外中古建物にかかる不動産所得の損失の一部について、国内不動産所得との内部相殺、及び給与所得などとの損益通算ができないというものです。対象となる中古物件は、以下のとおりです。

・個人、または法人により事業の用に供された国外の建物

・個人が取得し、これをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもの

・不動産所得の計算上、その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を「簡便法」または「一定の書類の添付がない見積法」で算定しているもの

海外不動産における節税スキームの現状

昨今の税制改正により、海外不動産投資での節税スキームが難しくなっている状況です。今後、海外不動産投資を節税目的で始める方は、どのようなポイントに注意するべきかを解説します。

税制改正により減価償却費の計上は不可に

前述したとおり、令和2年度の「税制改正大綱」により、海外不動産で生じた減価償却費の計上が不可能となりました。この減価償却費の計上が不可能となった背景には、アメリカ・ハワイの木造中古物件に投資することによる節税対策が挙げられます。(※2)

そもそも減価償却費とは、不動産など資産の経年劣化による価値の目減り分を、経費として計上する費用を意味します。減価償却費を最大化するためには、減価償却期間を可能な限り短期化する築古の物件が必要です。

しかし、日本国内の築古の物件は流動性が低く、購入しても売却先が見つからない可能性があります。一方、アメリカ・ハワイでは、築古の中古物件の流動性が高く、富裕層を中心に節税目的による投資が行われてきました。アメリカ国内における築年数が22年以上の木造物件だと、4年間での減価償却が可能で、節税スキームとして注目を集めていました。

今回の税制改正大綱で、アメリカ・ハワイを含む海外不動産における減価償却費の経費計上が不可能になったということです。

海外不動産の維持を目的とした経費は計上可能

減価償却費の経費計上ができない結果となりましたが、不動産維持を目的とした経費の計上は可能です。具体的には、物件の修繕費、管理費、支払金利、火災保険などは、経費に認められます。ただし、税制が今後変わる可能性もあるので、海外不動産の税金に詳しい税理士にも相談することをおすすめします。

海外不動産における確定申告の方法

海外不動産に関する確定申告は、日本・海外現地の双方で行う必要があります。そこで、日本国内における確定申告を進める手順を紹介します。

確定申告に必要な書類を集める

はじめに、確定申告に必要な書類を集めます。状況に応じて異なりますが、基本的には以下の書類を準備しておきます。なお、不動産保有中に、物件の修繕や管理費などの経費が発生している場合には、領収書も用意しておきましょう。

・確定申告書

・源泉徴収票(会社員として収入を得ている場合)

・不動産の売買契約書

・不動産購入時の精算書

・賃貸契約書(家賃収入がある場合)

・賃貸管理会社からのレポート(家賃収入がある場合)

・海外現地で発生した税金の納付書

・ローンの返済予定書(ローンを組んでいる場合)

・領収書(物件の修繕、管理費、各種保険費用など)

2.収支内訳書を作成する

海外不動産を賃貸に出し、家賃収入を得ている方は収支内訳書を作成します。収支内訳書には、一般用、不動産所得用、農業所得用の3種類ありますが、国内不動産同様に「不動産所得用」を使用してください。

収入金額欄には、賃貸料、敷金・更新料といった家賃収入に該当する金額を記入します。同時に、経費や減価償却費などを記入したうえで、最終的な所得金額を算出します。

令和2年分:収支内訳書(不動産所得用)の書き方

3.外国税額控除明細書を作成する

日本国内で確定申告書を作成する際に、「外国税額控除明細書」の作成を忘れないようにしましょう。上述したとおり、日本と海外不動産を購入した国で租税条約を締結している場合、海外で支払った税金が控除されます。

海外不動産を所有している国名、所得の種類、外国所得税額の記入に加え、過去3年間以内に繰越控除金がある場合には、併せて記入しましょう。

外国税額控除に関する明細書(居住者用)

4.確定申告書を作成・提出する

すべての書類の準備が完了したあとは、確定申告書の作成に移ります。海外不動産の所得額だけでなく、給与所得や医療費控除などがあれば、忘れずに記入してください。確定申告の詳しい書き方については、税理士への相談を推奨します。

まとめ

日本国内の不動産投資と同じように、海外不動産投資でも税金が発生します。海外不動産購入時・保有時・売却時に加え、贈与・相続する際にも納税義務が課されます。

とくに、日本に居住している方は、日本と海外現地で二重課税を避けるためにも、確定申告時に外国税額控除明細書の作成を忘れないようにしましょう。当社では、カンボジアやマレーシアといった東南アジアを中心に、海外不動産を取り扱っています。

海外不動産で生じる税金のことだけでなく、海外不動産の購入方法や、おすすめの国、利回りなど、少しでも気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。海外不動産に精通したスタッフが丁寧に対応いたします。

出典

※1:JETRO「マレーシア税制

※2:令和2年度税制改正の大綱